世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)

休校により授業もできず、授業実践もままならず。今回はしばらく前に読んだ本の紹介。
 
Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
 
本書の構成は以下の通り。
  1. Impart Knowledge
  2. Debate and Discuss
  3. Transform Knowledge
  4. Compare, Contrast, Link
  5. Judgemets and Interpretations
  6. Group Work
  7. Tests and Revision
  8. Classroom Display
  9. Essay Skills
  10. Other Ideas
 
 著者のウェブサイトによると、著者はオックスフォード大学をでたあと、イングランドのWolverhampton Grammar Schoolに務めたあと、現在はフランスのInternational school of Toulouseに勤務しているようである。本書は中等学校 Secondary School(11~16歳、場合によっては18歳まで)での実践事例を中心に収録されており、アイデアをコンパクトに並べた感がある。
 詳しい内容は本書を読んでほしいが、一読して印象に残ったことは「生徒に考えさせる」という姿勢が貫かれている、ということである。日本の世界史教育を仮に「広く、浅く、教師がしゃべる」と特徴づけるならば、本書で示されるのは「狭く、深く、生徒が動き、考え、発表する」ことである。例えば年表や地図の使い方であるが、日本の世界史教育では「確認」以上の使い方はほとんどされていないのではないだろうか(私だけだろうか?)。年表に示された事項の並び替え、政治・経済・宗教といった要素へのカテゴリ分け、年表における各事項への適切な画像の挿入、年表の各事項はいかに立証されているか、年表に示されていない課題は何か、などのアイデアが提示されている。教材は教員の活用アイデア次第であることを痛感させられた。
 掲載されているアイデア・実践の多くは、「広く・浅く」の日本の世界史教育ではそのまま適用することは困難である。しかし「諸資料から歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付ける」「考察、構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を養う」*1 を謳っている歴史総合の実践において、この本の実践例は参考になる部分が多いのではないだろうか。個々のアイデアはコンパクトなため、歴史総合にむけて、少しずつ試行を重ねていきたい。
 なお本書はVol.2も出ている。そちらもぜひチェックしたい。

*1: 文部科学省、『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 地理歴史編』125~127頁。