世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

「π型学習」

  • 総目次に見る時代性
    •  歴史教育者協議会『歴史地理教育』の総目次を眺めると、特に古い年代のものに関しては強く時代性を帯びており、興味深く考えさせられるものが多い。
    •  眺めているうちに「π(パイ)型学習」という私にとって見慣れない言葉が飛び込んできた。私は大学では歴史を専攻していたため、教員免許はとっていても教育学に関しては全くの素人である。講義も免許取得のために受講するという意識が当時は強かったし、また教員採用試験の教育学関連の知識ももはやほとんど忘れてしまった。「π型学習」という言葉は見たことがあるかもしれないが、まったくその内容に検討がつかなかった。
  • π型学習とは
    •  日本社会科教育学会『新版 社会科教育事典』(ぎょうせい、2012、80p)によると、1969年の学習指導要領の改訂によって「中学校社会科では、地理的分野と歴史的分野を並行して学習させ(地歴並行学習)、その基礎の上に公民的分野の学習を展開する」ことが原則とされたが、これを「π型学習」と呼ぶそうだ。これに相対立するのが「ザブトン型学習」で、「π型学習」より以前の1958年の学習指導要領の改訂によって「3分野性の中学校社会科が制度として確立し、第1学年で地理的分野、第2学年で歴史的分野、第3学年で政治・経済・社会的分野を学習させる」学習配列が原則とされていたらしい。中学校社会科の学習配列をこのように呼び表していたとは知らなかった。高校教員とはいえ、ちょっと恥ずかしい。
  • 『歴史地理教育』の立場
    •  『歴史地理教育』の総目次では、「π型学習」の言葉が出てくるのは1971年の11月号である。これ以降「π型学習」に関する論考が断続的に見受けられ、1973年からは毎号設けられている特集でも取り上げられている月がある。1974年までの目次の文言から察するに、『歴史地理教育』の立場としては「π型学習」にかなり批判的な立場をとっている。私としては学年ごとに教科を分断するより、歴史・地理・公民的内容をまとめて扱ったほうが、その相互連関性から考えて理解が深まるのではないかと思うが、当時はどのような議論がなされていたのだろうか。
  • 制度やカリキュラムへの関心を
    •  いずれにせよ今回の疑問を通じて、自分の関心や知識が教室内実践に強く偏ったものであり、制度やカリキュラムといった点に関する無知を思い知らされた。もっと学ばなくてはならないが、『歴史地理教育』の総目次に現れた時代性は、学びの入り口として役立ちそうである。