世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その8

コロナによる休館で入手が遅れていた文献がようやく手に入ったので、次回の資料紹介ではなんとかマグナ=カルタを扱いたい。今回は以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
 
以下、該当文献からの引用。
マキャヴェリ『ディスコルシ』
概要:マキャベリは『君主論』の「目的は手段を正当化する」という文言で示されるような政治システムの提唱者として著名である。しかし『ディスコルシ』において、彼は冷酷な君主よりも共和制による政府が良いと結論している。
 
要約Document in Brief:『ディスコルシ』において、マキャベリは共和制の設立と存続について論じた。
 
本文:省略
 
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
  1. マキャベリは、不法な君主を法の支配のもとに置く唯一の方法は( )としている。
  1. 対話
  2. 実力行使
  3. 人々の法的権利の議論
  4. 僭主の選出
  1. マキャベリは不法な民衆による重大な危機は( )だと結論している。
  1. 独裁者の出現
  2. 群衆による暴力
  3. 君主の喪失
  4. 財産の破壊
  1. C.T. Making Inferences
マキャベリが、君主よりも民衆の方が批判されやすいとしているのはなぜだとあなたは考えるか。
 
 
以下、ブログ投稿者のコメント。
 マキャベリといえば『君主論』における扱いしか頭になかったため、この『ディスコルシ』の議論は新鮮に感じる。これまでマキャベリに関しては、中世から近世への展開に位置づけられるルネサンス期の、政治思想の革新者といった扱いを私はとってきた。中世のキリスト教的色彩の模範的君主から、よりリアリズムに基づいた君主像への変化を、『君主論』の引用によって説明してきた。
 これ自体はルネサンス期における認識・世界観の変化の事例としてわかりやすく、今後も引き続き実践していく価値はあると思う。一方で今後の歴史総合の授業構想を考える際には、『ディスコルシ』の活用を試みてみたいと思う。民主政の歴史的考察において、具体的事例として重宝するのではないか。世界史Bや世界史探求においても、プラトンアリストテレスなどを端緒とした、政治体制の思想史をテーマ史的な扱いで一度実践してみたい。