世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

授業実践:ヨーロッパ世界の拡大(大航海時代)

問1 下線部1について、これを立証するのに適切な資料を、資料2~5から一つ選べ。*資料3~5は省略
資料1 商業や航海の発展は、地中海を通じてヨーロッパと東方とを結びつけるルートを次第に時代遅れのものとし、代わって大西洋に面するポルトガルやスペインが、アフリカの南端を廻ってアジアに出るとか、新大陸に向うとかの航路の開拓および貿易を盛んに試みることとなります。それと同時に、航海や取引のために権限や資金をあたえ、その成果である領土や利益を手に入れたのはスペインやポルトガルの王室であったということも重要です。「大航海の時代」と呼ばれるこの時代の大事業は、単なる私人や私企業の及ぶところではなかったのです。ですから、外国貿易といっても、それは特別に準備した商船に莫大な荷を積みこみ、それに護衛船をつけ、取引に当っては政府の役人が値段を決め、品物は政府の倉庫に収めるという具合に、実体は王室による管理貿易でした1。したがって一六世紀以後を単純に貿易や商業の発達した時期という具合に見てはならないのです。出典:河野健二『世界史への招待』78〜9pp
 
問2 (a)にあてはまるものを選べ。*選択肢は省略
資料2 …フランク人の国から人がきたという知らせがモザンビークからあった。彼らは3隻の船を持ち,隊長の名は(a)であるといった。 2,3日して,その船隊はキルワをすぎてマフィア(北方の隣りの島)へ向かったという知らせがきた。マフィアの君主は大よろこびであった。彼ら(フランク人)は親切で正直であると思われていたからであった。しかし,本当を知っている者は,あの連中は人がらが悪くうそつきで, この国を奪うためにさぐりを入れにきたにすぎない, と断言した。そこでみなは,彼らの船のいかりを切って座礁させ,回教信徒(ムスリムのこと)の手によって大破させようと決意した。 フランク人は, このことをかぎつけて,マリンディへ去ってしまった。マリンディの人たちは,その船隊を見たとき,これは戦争と堕落の厄病神だと気づき,おおいにおそれ悩んだ。マリンディは,彼ら(フランク人)に,水,食料,まき,その他,彼らが要求する物をすべて与えた。するとフランク人は,水先案内人を1人出してインドまで案内し, さらに彼ら自身の国まで水先案内をせよ, といった。出典:綿引弘『100時間の世界史資料』90p
 
 
 
  • 対象学年 3年生
  • 想定所要時間 20分(全5資料分の時間)
  • 教員のねらい
問1は単純な記憶をテストするようなものではなく、立証に適する資料を選ばせる問題。積極的に諸資料を読ませるための問いでもある。問2は見知らぬ用語が出てくる資料でもきちんと読み通し、ヒントを見出したうえで論理的に思考をさせることを意図している。マリンディやインドというキーワードと、航海者たちのルートを踏まえて考察することで解答ができる。
  • 想定難易度
選択形式であるため、それほど難しくない。
 
  • 実践してみた結果
問1の形式(立証に適する資料選択)は初めての試みであったため、生徒は多少戸惑っていたが、最終的には解答にたどり着いたものがほとんどであった。コロナ関係でグループワークの実践が難しく、一人で黙々と作業をする光景が見られたが、逆に安易な他力本願に走らず作業に打ち込むことができたようである。掲載している資料はどうせならしっかりと呼んでほしいと常に願っているため問1のような形式を導入したが、それがうまく作用したのか、今回はきちんと読み込んだ生徒がほとんどであったと感じた。
  •  課題
問1・2ともに、自分で教科書・資料集を調べて解答できており、出来は良かった。ただ問1に関しては、形式上いくつかの資料を準備せねばならず、毎回の実践は時間的に厳しいものがある。また多くの資料を掲載することにより読むだけでも結構な時間がかかる。いつものことだが、時間の確保は大きな課題である。この形式の問いは自然と他の資料の読み込みを促進するものになっていると思われるため、今後もなるべく取り入れたい。