世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その9

以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
 
以下、該当文献からの引用。
概要:1490年、ポルトガル人はコンゴ王の息子をキリスト教へ改宗させ、王位に就くことを助けた。アフォンソ1世である。しかしアフォンソ1世ポルトガルとの関係が極めて悪い結果をもたらすことをすぐに理解した。そのことは1526年のポルトガル王ジョンへの手紙に見ることができる。
 
要約Document in Brief:手紙の中で、アフォンソ1世奴隷貿易を終わらせることをポルトガル王へ懇願している。
 
本文:省略
 
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
  1. この手紙の著者の意図を示したものとして最も適切なものを選べ。
  1. 奴隷貿易を終わらせるための、ポルトガル王への資金援助
  2. 虐待に関してポルトガル王に知らせること、またそれをやめさせるための援助を求めること
  3. コンゴ王国で行われている奴隷貿易に関して、その規模をポルトガル王に知らせること
  4. ポルトガル王に対して、なぜコンゴの人々が奴隷にされているのか、説明を求めること
  1. 最後のパラグラフで、アフォンソ1世ポルトガル王に求めていることは何か。
  1. いかなる商人、商品もコンゴへ送らないでほしい
  2. 教師を送ってほしい
  3. 聖職者を送ってほしい
  4. アフォンソ1世を祝福してほしい
  1. C.T. Recognizing Causes and Effects
アフォンソ1世によれば、ポルトガル人はコンゴ王国にどのような影響を与えてきたか
 
 
以下、ブログ投稿者のコメント。
  まず問題形式に関して。これまで自分が作った資料問題は多くが、既習事項(一問一答的な)を答えさせるものであったが、上記の問いのように「資料の読み取り」を問う形式を今後増やしていきたいと思った。選択肢形式で慣れさせていけば、最終的には要約などの作業にもスムーズにつなげられるであろう。
 大西洋三角貿易の部分で扱う、奴隷貿易の授業において、これまで自分がよく用いてきたのは統計資料である。いかに多くの人々が奴隷としてアメリカ大陸へ「輸出」されてきたかを伝えるための資料であるが、正直に言えば、数が大きすぎて実感が伴っていない様子が生徒に見られた。幸い奴隷貿易に関しては絵画資料が豊富なため、それを併用することで奴隷貿易の非人道性を伝えることができる。
 しかしこれまでの実践でかけている視点がある。奴隷の輸送過程とアメリカ大陸到着後の労働に関しては多くの資料があるものの、アフリカ大陸における奴隷の確保と取引に関して、白人と黒人両視点ともに資料が少ない。上記の資料は、これまで欠けていた視点を埋める資料として興味深い。ヨーロッパとの関係を維持しつつも、奴隷貿易根絶を目指すジレンマに悩まされるアフォンソ1世は、生徒に多くの「考えさせる」問題を提供してくれるように思う。奴隷貿易は現代世界の構造にも大きな影響を与えていることを考えれば、歴史総合の題材としても扱えるように思う。ぜひ教材を開発してみたい。