世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

授業実践:宗教改革

資料5 私たちが、あの不信仰な教皇たちと同じように、何が信仰にふさわしく、何がふさわしくないのかを考えることは、なぜいけないのでしょうか。…『ガラテヤの信徒への手紙』第二章〔第一― 節以下〕で語られているとおり、聖パウロは聖ペトロが誤っていると批判しています。つまり、キリスト者は誰でも信仰について責任を負い、理解し、それを守って、あらゆる過ちを断罪する権能を与えられているのです。出典:ルター『宗教改革三大文書』、2017年、65-66pp

問 下線部が示す内容として適切なものを選べ。  万人司祭主義 予定説 聖書主義 教皇至上主義

 

資料9 『キリスト教綱要』

…この選択は神がすべてのものらを無差別に救いの希望に取り入れ給うのではなくて、他のものらに拒否し給うところのものを、ある者らに与え給うたというこの対照によって神の恩寵を明らかにする。…けだし人間は平等な状態において創造されず、あるものらに対して永遠の生命が、(また)あるものらに対して永遠の定罪が予(あらかじ)め定められている。…主は救いに招くひとびとを,無償の慈悲で受け入れ,これに反して,地獄に落さんとするものには、生の道はいずれも閉ざされ、しかもそれはどのように正義公平であるにせよ、秘かにしてはかり知ることのできない主の審きによっておこなわれるという。出典:『世界史資料』東京法令、460p

問 この資料は何についての資料か、選べ。 万人司祭主義 予定説 聖書主義 教皇至上主義

 

  • 対象学年 3年生
  • 想定所要時間 20分(問を設けた全6資料分の時間)
  • 教員のねらい

 授業で教授した概念を、実際の資料を読みながら確かめる。宗教改革の授業は、10個の資料がB4一枚にびっしりと記述された資料プリントを用いて行った。各資料にはできるだけ問いを作り、半ば強制的に生徒が資料を読み通すように意図している。授業中に触れる・解説する資料は問いが作成できなかった資料が中心となり、上記に掲載した資料は問いがあるため教員の解説は一切行っていない。

  • 想定難易度

 選択形式であるため、それほど難しくないはずである。

  • 実践してみた結果

 取り組みの速度に差はあれど、誤った解答をする生徒はほとんどいなかった。

  • 実践してみた結果

 授業の内容を聞いていないと(聞いていても)、こうして実際の資料にあたり、教科書や参考書の表現とは異なる形で問われた際には適当な解答や思考を行うことは難しい。教員の側からすれば、資料の中に含まれている露骨なヒントキーワードですぐに解答できるだろうと決めつけてしまうが、生徒の側から考えれば初めて学ぶ内容を、普段読みもしないような難しい表現や文章の中で問われていることになる。最近選択肢の問題を設けることが多いのは、生徒の負荷を減らすことを意図している。

 資料の分量が多いため、読むスピードが遅い生徒には大変な時間であっただろう。しかし大学進学を考える生徒であれば、読む能力は当然に必要になるはずで、国語科に読解能力育成を任せるのではなくて社会科の側でも実践させていくべきである。日頃から資料を用いて教授する際に、どこに注目するか、主題や主張はなにか、といったことを伝え、メモさせていくことで、徐々に力をつけさせていくというのが現時点ですぐに実践できそうな方策であろうか。