世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

教材:対独プロパガンダ

f:id:historyandteaching:20211024110625j:plain

戦争におけるドイツ「文化」:ロイド・ジョージはイギリスの戦争プロパガンダを遂行する組織(British War Propaganda Bureau)の設置を命じられた。彼はこの組織の長に、優秀な書き手でもあった自由党のチャールズ・マスターマンを任命。組織の最初の仕事はドイツ軍がベルギー市民に対して組織的に虐殺・拷問行為を行っているという情報に信憑性を与えることであった。出典: Benson,T.S., The Cartoon century modern Britain through the eyes of its cartoonists(Cornerstone, 2007),48p.
 
 
  • 今Benson,T.S., The Cartoon century modern Britain through the eyes of its cartoonists(Cornerstone, 2007)という本を読んでいる。20世紀にイギリスで出版された風刺画を集めたものだが、イギリスに限らず世界史的出来事を多く扱っていて便利である。
  • 学校の教科書や資料集では、第一次世界大戦に関する画像資料は多くが軍隊募集(特に女性を描いたもの)であり、上図に見られるような他国に対する風刺画などは第二次世界大戦におけるものが中心であった。
  • 他国・他民族に対する偏見や印象操作などのプロパガンダが多く実施されていたことは、これまでの学校での歴史教育ではあまり行われてきていなかったように思う。下手をすると他国・他民族に対する生徒の偏見を助長してしまうという懸念はあるが、事実としてプロパガンダが積極的に用いられていた、また現在でも用いられている以上、授業でもきちんと扱うべきではないか。
  • この資料では第一次世界大戦プロパガンダにおいては比較的ポピュラーな、「ドイツ軍によるベルギー市民への残虐行為」その中でも特によく流布したとされる「子供を刺し殺す」様子がきちんと描かれている。アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』(草思社、2015)などを活用しながら、戦争の一側面をきちんと学べる授業を作りたい。