世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

教材:漢王朝と儒家

  • 『馬上に天下を得るも、馬上をもって之を治むるは難し』「漢の儒者陸 賈が高祖劉邦をいましめたことばの一節。平民出身で天下を統一した高祖が武を誇り、文を軽視したので、文治の重要性を教えたもの。武力で天下を統一できても,武力で統一を維持することはむずかしいという意味をあらわす。」出典: 江上波夫 『新訳世界史史料・名言集』 167p
 
 
  •  項羽と劉邦の対照的パーソナリティは有名である。だからこそ、こうした史料は劉邦のイメージを修正する可能性のあるものとして面白い。一般に語られる劉邦のイメージは項羽との決着までが大半で、項羽を下したあとの劉邦がどのような人物で、どのような統治をおこなっていったのか、よくわからない。
  •  また秦王朝の法家思想から漢王朝における儒家思想への転換も有名で、この史料は発言者が儒者であることから、こうした転換を読み取ることも可能であろう。
  •  だが、秦→漢における法家→儒家という転換という「物語」はわかりやすいし授業をする際にはかなりこの歴史像に乗っ取ってしまうのだが、自分としてはあまり腑に落ちた歴史像ではない。
  •  というのも、中国のように中央集権体制(郡国制から郡県制への転換など)を整える国家において、法家的な要素が決定的に必要になるのは当然に思えるからである。これは現代的常識を過去に当てはめてしまっているのだろうか?しかし六部の「刑部」や「律令格式」など、これらは明らかに法家的基盤によるもののような気がする。このあたり、中国史ではどのように説明されるのだろうか?まだまだ勉強が必要である。