世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

授業実践:教科書読解指導

因果関係の整理:教科書を読み、問の答えとなる部分に線を引きなさい。
Q. なぜウィーン会議が開かれ、なにが目指されたのか。
 
Q.選挙法の改正が行われたのはなぜか。
 
Q.1848年にヨーロッパ各地で革命がおこったのはなぜか。
 
上記に引用したのは、私が実践していた教科書読解指導の教材例である。
  • 教員のねらい
歴史教科書を読むという行為は難しい。自分の高校時代を思い出しても、教科書を能動的に、楽しく読むということはなかった。読んでも何も覚えていなかったり、むやみやたらに線を引いたり、あるいは太字だけを無意味にマーキングしたりした。今振り返れば太字のマーキングに関しては試験の出題箇所を確認するという意味で無意味なものではなかったかもしれない。だが教科書を読む行為を試験対策という目的のみで指導するのはむなしい。生徒にもっと能動的に文章・本を読むという行為を指導し、歴史教育を超えて読解能力、そしてそれに伴う思考力を身につけさせたい。
  • 実践と課題
いわゆる無味乾燥な歴史教科書を、いかに能動的に読ませるか。上記引用にあるように、問を設定し、その答えを探すという意識を持たせたうえで教科書を読ませてみた。ただしいわゆる一問一答的な問いはここでは作らず、「Why」形式の問にすることにより、太字などのキーワードを探すという作業にならないようにした。生徒との会話を通じて、一問一答的な問いによる読解ではきちんと文章を読んで理解していないという印象を私は抱いていたからである。なお「How」形式の問題にすると、生徒が課題を達成できない、もしくはやたらに線を引くという状態に陥りやすかったため、原則として「Why」形式に統一する、という現在の形に落ち着いた。
毎時間予習を課しているため、この読解課題についても予習として取り組ませた。当初は解答を書き出させたが、時間がかかる上にプリントのスペースを圧迫するため、教科書に線を引かせる現在の形に変更した。実際の読書の際にも線を引きながら読むという行為は一般的であるため、こちらのほうが実践的であると判断した。
課題は3つある。一つは答えの確認をどのように行うか。もう一つはいかに予習をきちんと行わせるか。最後に、いかに時間をかけずに指導をするか。これらの問題は相互に連関している。当初答えの確認を教員が読み上げたところ、生徒たちはすぐに予習をやめてしまった。間違えることをいやがり、教員の答えを聞いてから線を引くという行動をとるようになった。これでは意味がないため、グループワークの形でお互いの線の引いた場所を確認させたり、指名して読み上げさせたりした。しかしこうして丁寧に指導をすれば、当然ながら時間がどんどんかかってしまう。試行錯誤の末、結局途中で実践を事実上断念し、答えを確認することはやめた。本来の目的は能動的な読書の姿勢を身に着けさせることだったはずであると自分を正当化した。
  • 展望
この読書指導は予習ありきだったため、授業のはじめに答えを確認した。最初にある程度内容を理解しておけば、その後の講義や演習をスムーズにいくはずだとの思惑でそうした配置にしたのだが、今にすればこれが失敗の原因の一つであったかもしれない。むしろ授業のまとめに確認を行えば、残りの時間に応じて教員が答えを言うか、指名やグループワークを行うか、柔軟に選択することができる。生徒も授業を振り返りながら、予習時に線を引いた箇所が正しいかどうかを判断することができる。「Why」形式の問に取り組むこと自体は、一問一答に比べより深い思考を生徒に要求するものであるから、この指導はできるだけ取り入れたい。あとはいかに予習を徹底させるか、方法を考える必要がある。