世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

授業実践:三十年戦争

資料 スイスの画家メリアンの書簡(1652)

…(ドイツには)おそるべき悪疫,有毒の熱病と、そのほか忌わしい死病が支配しています。…人間は家畜のように野の草を積み重ね(拾い集め),木の葉っぱを取り,煮てむさぼり食いました。いや,その縮んでしまった胃を鎮めるために変質した(半ば腐敗した)食物の一片を得ることができたときには,多くの人びとはそれを美味いものと思ったほどでありました。実際に、10人あるいは12人の飢えた人間たちが,皮剥場の死んだ動物の周りで互いになぐり合いをする,いや,ついにはお互いに食いつくすというありさまは、まことに惨憺たる忌わしき光景でありました。出典:『世界史資料 上』東京法令468p

問1 この資料はどのような事件を示す資料か。

問2 下線部について、このような状況を生み出したのはどのような人々によるものか、漢字2文字で答えよ。

 

  • 対象学年 3年生
  • 想定所要時間 20分(問を設けた全4資料分の時間)
  • 教員のねらい

 授業で講義した事象を、実際の史料と照合させる。また、教員の説明だけでなく、史料の記述から歴史事象に対するイメージを膨らませる。

  • 想定難易度

 三十年戦争の講義直後に取り組ませた。史料文中にヒントがいくつかあり、講義中に言及した内容なので、この問題の演習の際に特に解説・助言はしていないが、回答は容易なはずである。

  • 実践してみた結果

 問1に関しては「17世紀の危機」、問2に関しては「農奴」「プロテスタント」といった回答が多く見られた。17世紀の危機に関しては同じ時間に扱っていたことと、教科書の構成上そのすぐあとに三十年戦争の展開とその惨状が続くため、両者を明確に区別しないまま理解してしまっているのであろう。問2のプロテスタントに関してはユグノー戦争を、農奴に関しては中世末期の農民反乱などを想起したのだろうか?いずれにせよ講義によって達する理解度の低さが実証されてしまったような感がある。あるいは史料に対する着眼点(出典が1652年、ドイツというヒント)などをもっと丁寧に講義すべきかもしれないが、結局のところ講義そのものの限界性という根本的問題に突き当たる。もしくは年代暗記を強要するのがいやなので普段の授業であまり年代を細かく言わないようにしているのだが、それがこのような各事象の生じた時代の混同につながっているのだろうか?