世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Irish, J. P., Brun-Ozuna, B. S., Historical Thinking Skills: A Workbook for World Historyその2

 シンキングツールに関する雑感で言及した、アメリカの学校向けのワークブックの紹介の続き。
 
Irish, J. P., Brun-Ozuna, B. S., Historical Thinking Skills: A Workbook for World History(W W Norton & Co Inc, 2016).
 
 
今回紹介するツールは 継続性と変化Continuity and Change。
 
 本書の解説によれば、このツールの目的は諸事象を精査し、それらを年代順に並べ、その期間に継続性と変化のいずれが生じているかを判断することにある。また理解を深めるために、このツールを用いてディスカッションを行うことが強調されている。
 ツールに関して補足しておくと、ツール上部の矢印は、テーマに関する諸事象を年代順に書き込むのに用いる。その中から重要と考える三つの事象を選択し、さらに最も重要とみなすものに丸を付ける。こうした作業を通じて思考を深め、テーマとその期間における重要な変化を見出すことを狙っていると思われる。最終的にはこの最も重要とみなす事象の前後の時代に関して、その特性を文章で記述させる。
 私自身はまだこのツールを用いたことはないが、歴史総合を見据えて、ぜひ用いてみたいツールの一つである。本書の事例の中にも「都市化1600-1900」というテーマがあるが、「産業革命」や「大衆社会」といったテーマでの実践も可能であろう。
 想定される課題としては、ディスカッションをどのタイミングで行うか、扱う諸事象の提示をいかに行うか(教科書・資料集などから生徒が選択?最初から教員がキーワードを提示?)、といった点であろう。特に後者に関しては生徒の実情に合わせて慎重に実践しないと、学習活動が深まらないかもしれない。初めてこのツールを用いる際は、丁寧な記入例を示したほうが生徒が理解しやすく、作業に集中できるだろう。