世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:ヘキサゴン・ラーニングーKJ法とシンキングツールのミックス

以前紹介したタールの歴史授業アイデア集の第2巻を読み終わったので、第1巻から各章の興味深い部分をピックアップしていきたいと思う。
 
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Volume Two: Even More Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2018)
 
第1巻 第1章 Imparting Knowledge to Students
第1章からは、ヘキサゴン・ラーニングHexagon Learningと題された手法を取り上げる。
 
 
この手法の目的は、学習者に以下のことを習得させることにある。
・相互に関連付ける
・カテゴリ化してまとめる
・優先順位をつけさせる
 
 小さな6角形の用紙の中に情報を書き込み、相互の関連を考えつつどんどん配置・入れ替えをしながら、いくつかの6角形をまとめ上げカテゴリ化し、かつ優先順位をつける。この作業はエッセイ執筆の予備作業的位置づけに当たるようである。いわゆるKJ法にかなり近い手法だが、6角形の用紙を使っていることで、となりあう6角形の相互のつながりがより意識される点が特色となるだろうか。思考を触発する点では、シンキングツールに通底するものを感じさせる。というのもKJ法における付箋利用は、生徒によっては「もったいない」精神を発揮して一つの付箋にいくつも情報を書き込んだり、重要ではなさそうだからとせっかくの情報を書き込まなかったりといったことが生じうる。思考を促すこと、気軽に書き込めることというシンキングツールの強みをもった手法であるといえる。
 面白い指摘は一次史料も織り交ぜることができる、という点である。複数の一次史料を与えて考えさせる作業をするときに、ぜひ用いてみたい。
 
 課題としては
・6角形に書き込む情報がたくさん必要
・6角形用紙の準備
 といった点であろうか。
 日本の高校世界史では「広く浅く」歴史を扱うこと一般的なため、ヘキサゴン・ラーニングを成り立たせるほどの情報量が果たしてあるかどうか。現行のB科目とあまり変化がないとうわさされている探求科目より、歴史総合などでの活用が現実であろう。
 また6角形用紙を大量に事前に準備しておきたいところだが、形の関係上裁断機では作業ができない。ハサミで切り取るしかないが、さすがにこれは生徒にやってもらうしかない。切り取るのは意外に時間がかかり、とてももったいない。ただこの点に関しては著者のHPにウェブ上で作動するサービスが公開されているため、一人一台タブレットが実現されれば解決の方向性が見えるだろう。