世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Irish, J. P., Brun-Ozuna, B. S., Historical Thinking Skills: A Workbook for World Historyその3

シンキングツールに関する雑感で言及した、アメリカの学校向けのワークブックの紹介の続き。
 
Irish, J. P., Brun-Ozuna, B. S., Historical Thinking Skills: A Workbook for World History(W W Norton & Co Inc, 2016).
 
 
今回紹介するツールは 因果関係Causation。
 
 シンキングツールそのものはシンプルなものである。この因果関係で扱われているテーマをいくつか拾ってみると、以下のようなものになる。
新石器革命
遠隔交易
14世紀における黒死病
 
 いずれのテーマもかなり大きなものであるが、原因と結果を3つ書きこむことを考えれば当然なのかもしれない。正直に言えば現在の高校世界史Bの授業で、かつ毎日の授業を想定した場合にこのシンキングツールはつかいにくい。教科書はテーマ別の記述になっていないから情報量が圧倒的に不足しているし、それなりに時間を要するこのツールに割く時間的余裕もない。ただし各章のまとめなどで、年に数回程度という感じであれば、むしろシンプルなツールのため扱いやすそうである。現在の教科書・資料集を念頭におくと、扱うテーマは十字軍、モンゴル帝国の拡大、大航海時代産業革命帝国主義、第一次・第二次世界大戦、冷戦などがやりやすいか。歴史総合はテーマ別の要素が強いようなので、ぜひこのツールに習熟しておきたいところである。
 問題は実際にこのツールで作業をしたあとである。こういったツール・ワークシートでいつも悩むのだが、個人作業後のフォローをいかに行うか。班で、もしくはクラスで情報を共有する(教員は基本介入しない)のか、それとも教員のほうでまとめるのか。私のやり方が悪いのだろうが、班やクラスによる共有はいまいち内容の深まりがきちんとなされているのかわからないし、教員がすべて説明してしまっては生徒の個人作業段階のインセンティブをつぶしてしまいかねない。だからといってまったくのフォローなしでは誤りに気づけないし、広い視野も得られない。
 一般に社会科教員はどのようにフォロー・まとめを行っているのだろうか。ぜひ教えていただきたい。