世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

Wheel of life-人物や出来事の評価に、手軽に使えるシンキングツール

以前紹介したタールの歴史授業アイデア集の、各章の興味深い部分をピックアップしていく。
 
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Volume Two: Even More Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2018)
 
第1巻 第5章 Judgments and interpretations
 
第5章からは、Wheel of lifeと題された手法を取り上げる。
 
 
手順
1:学習の最後において、評価を行う一人の人物ないし一つの出来事を取り上げる。
2:評価のための4~8観点を設定する。
3:生徒はそれぞれの評価の観点について、10段階で記入用紙に書き込む。
4:出来上がった図について、生徒は説明を行う。
 
出典「TARR'S TOOLBOX」http://www.classtools.net/blog/wheel-of-life/より
 
 手順1~4いずれも生徒に任せることもできるし、教員のほうで担ってもよいため、汎用性の高いツールである。後に比較を行うことを考えると評価の観点は統一したほうが良いとも思えるが、あえて生徒に任せて、なぜその評価の観点を設定したのかを手順4で説明させても面白いだろう。いずれにせよこの作業を行うためにはきちんと扱う人物や出来事についての基礎的事項が頭に入っていることが必要であるため、授業の冒頭でこのワークシートを完成させることを告げることにより、生徒の能動的な授業態度も期待できるのではないだろうか。
 ネックとしては、それなりに詳しく人物や出来事を扱っていないと活用が難しいことであろう。シンキングツールなどを学びながらいつも思うのは、こうしたツールを活用して思考を深めるのに、高校世界史の「広く浅く」というスタイルは不向きなのではないか、という点である。自分の発想力のなさが原因かもしれないが、この点、他の世界史教員の皆さんはいかに取り組んでいるのかをぜひ知りたい。一方で、一昔前の(現在も?)小学校教育でよく取り組まれた、人物を通じての世界史教育などに、もう一度目を向けるべきかもしれない。毎時間扱うのは無理だとしても、各章で一人くらい、時代性(と地域性)をよく代表する人物を取り上げて、歴史学習ができないものか。もしそれができるなら、今回取り上げたツールは非常に有用なものとして用いることができるだろう。当面のToDoの一つに、そうした人物をリストアップする作業を含めておきたい。