世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

ターゲット・ダイアグラムー分析の仕方を学ぶ

 
 
以前紹介したタールの歴史授業アイデア集の、各章の興味深い部分をピックアップしていく。
 
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Volume Two: Even More Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2018)
 
第1巻 第4章 Comparing, contrasting, linking
 
第4章からは、カテゴライズのためのターゲット・ダイアグラムTarget diagrams for categorisationと題された手法を取り上げる。
 
 
手順
3層からなるシンキングツールに、以下の要領で記入していく。取り扱う問いを段階的に、より詳細に分析していくことになる。
第一層:3つの要因
第二層:それぞれの要因における二つの事例
第三層:第二層のそれぞれの事例における具体的な記述、より具体的なポイント
*それぞれの階層への記述は適宜グループで行い、クラスで記入内容を共有する。
 

f:id:historyandteaching:20201018094536j:plain

ターゲット・ダイアグラム


 
 本書で取り上げられている事例としては、ヒトラーの権力奪取や第一次世界大戦による影響などが挙げられている。個人でも事件でも、このシンキングツールは用いることができる。その意味で比較的日本の学校現場でも使いやすいツールではないかと思う。
 このツールの利点は、分析の手法を生徒が手軽に体験できる点にあると思う。つまり、複雑性を備えたある事象に対して、分析の観点を複数設定し、抽象→具象といった思考を展開することを、生徒に求めているからである。こうした思考は誰しも行っていることだとは思うが、きちんと整理した形で行われることは案外少ない。それは生徒の書いた文章を読むと一目瞭然で、彼らの文章では異なる観点の分析的文章が入り乱れ、抽象と具象のレベル調整といった考えはほとんどなされないまま記述されているのがわかる。つまり、こうした分析的思考や記述は、訓練しないと身につかないもので、生徒もそうした経験があまりないため苦手としているのであろう。
 第三層における具体的な記述は教科書や資料集で調べればよいとして、おそらく生徒が躓くのは第一・二層であると思われる。慣れないうちは第一層を教師が設定したり、各層にいくつか具体例を記入しておいてあげれば、それを参考にして生徒が自分で埋められるだろう。分析的思考を鍛える手段として、ぜひ日常的に使ってみたいツールである。