世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Structural skills:where are the paragraphs?歴史教育で行う文章指導

以前紹介したタールの歴史授業アイデア集の、各章の興味深い部分をピックアップしていく。
 
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Volume Two: Even More Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2018)
 
第1巻 第9章 Essay Skills
 
第9章からは「文章校正の技術:どこからパラグラフははじまるか?」を取り上げる。
 
手順
 エッセイや資料文を、段落分けを一切無くした状態で掲載したプリントを配布する。
 生徒は文章を読みつつ、元の文章がいかなる段落分けであったかを考えて段落分けする。
 
 
 一見すると現代文の内容かとも思えるが、この作業にはいくつも利点が思い浮かぶ。
1:生徒が自然とエッセイ、資料文を能動的に読み込む。
2:生徒が自分でエッセイを書くときに、パラグラフ・ライティングの技法を応用できる。
 エッセイ、資料文が長文になると、どこに着目するのかがわからなくなる生徒が増える。日本の読解に関する教育は基本的に短い量を深く読み込んでいくものだから(近年、英語でも国語でも大量の情報処理という傾向にシフトしているようだが)、世界史の史料でも長文になると読めないのだろう。読むというより見ている、眺めているだけということになりかねないが、この方法ならパラグラフに分割するという意識の元、能動的に読み込むことができる。
 また生徒が論述を行う際にも、パラグラフを意識した記述にすることは重要である。大学におけるレポートは当然として、文章一般に適用できる普遍的な技術であることからも、高校生のうちから練習しておく必要性がある。こうした活動を繰り返していけば、実際に生徒に文章を書かせたときにかなり質の向上が見込めるのではないか。
 近年のOCR技術の発達により、わざわざタイピングをせずとも長文資料を比較的短時間で準備できるようになった。長文を書かせることは教員によるフォロー・チェックの手間や授業時間が足りないことを考えればなかなか難しいかもしれないが、この活動のように読むことにフォーカスを当てたものであれば、比較的授業に組み込みやすい。できれば定期的に授業に組み込みたいものである。