世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Arcade Game Generator 学びにゲーム要素を取り入れる

以前紹介したタールの歴史授業アイデア集の、各章の興味深い部分をピックアップしていく。
 
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2016)
  • Tarr, R., A History Teaching Toolbox: Volume Two: Even More Practical Classroom Strategies( Createspace Independent Pub,2018)
 
第1巻 第7章 Tests and revision
 
 第7章からは、アーケードゲームジェネレイターを取り上げる。
 以下のサイトから、一問一答形式の問題を、アーケードゲームに変換することができる。
 
 
 昨今、「ゲーミフィケーション」の手法が各業界に取り入れられ始めており、教育にも少しずつ実践が始まっているようである。従来から、地理や公民において、ゲーム的要素を取り入れた授業の開発は進められてきた。しかし私としては、それらのゲームは高度なゲーム内容や道具の使用ゆえに柔軟性に乏しく、他の単元への応用が困難なため、自分が実践するのはためらわれてきた。結局、私の教育実践においては、トランプやすごろくなどの、単純だが応用のしやすい媒体を利用したものに限られていた(人名・条約名・都市名・文学作品名などで作られた神経衰弱、マルコ=ポーロを題材としたすごろくなど。)。しかしこれらも「飛び道具」的な扱いであり、生徒にとっては時折実践される楽しい授業、という程度にしか受け取られていないと思われる。できればより継続性のある形式でのゲーム要素の導入ができないものか、と考えていた。ここでいう継続性とは、教科書教授内容の広範囲で教材が作成できること、また毎時間の授業ないし家庭学習などにおいて、頻繁に取り組むことができることを指す。
 本書で取り上げられているアーケードゲームジェネレイターは、そうした継続性を備えるものとして、また単純な暗記作業に取り組みやすくするものとして、なかなかよいものではないかと思う。そもそも一問一答的な暗記が良いものだとは決して思わないが、日本の大学入試を鑑みて、また歴史に興味がない、まったく歴史の勉強に取り組む意思のない生徒に対しては、とっかかりとして悪くはないのではないかと思う。どのような手段であれ、歴史に(そして学ぶことに)積極的に向き合う姿勢を促すものであれば、ぜひとも取り入れたいと思う。
 しかしながらこのアーケードゲームジェネレイター、基本的にはゲームオーバーからのコンテニューの際に、こちらが作成した問題をクリアするとコンテニューができる、という形式のゲームが多い。そのため学習効率の悪さと、ハイスコア獲得に熱心な生徒以外はあまり取り組まないだろう。もう少しゲームプレイ自体に学習要素を取り入れたものであればなおよかったのだが。
 学習における初動の動機づけだけでなく、日々の学びの過程にゲーミフィケーションの手法を応用できないか、という点は私の今後の課題の一つである。ゲーミフィケーションと仰々しく言えるような段階ではないが、現在毎日の授業においてゲーミフィケーションの要素を取り入れた実践を模索中であり、成果がでればまた報告したい。