世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その11

以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
 
以下、該当文献からの引用。
概要:1688年にカトリックジェームズ2世が王位を追放された後、議会は王位をジェームズ2世の娘、プロテスタントのメアリーと彼女の夫オレンジ公ウィリアムにささげた。しかし議会はウィリアムとメアリに対し権利の章典を受け入れるよう要求した。王と議会の長い対立を踏まえ、この文書は議会が1628年の権利の請願以来求め続けてきた権限をまとめあげたものである。
 
要約Document in Brief:権利の章典は、王(女王)に対する議会の優越を認めている。
 
本文:省略
 
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
 
1. 権利の章典は王権に対して以下を要求している―
A 議員への給与支払いのための資金調達を行うこと
B 議会を定期的に招集すること
C 不正と認められた法を撤廃すること
D 国を守るため、常備軍を維持すること
 
2.権利の章典の抜粋部を最も的確に要約したものを選べ。
A 王の権限は議会によって制限される
B 議会の権限は王権によって制限される
C 議会の義務は法を改正することである
D 王の権限は制限されない
 
3.Critical Thinking: Making Inferences
議員が上記抜粋の第9条(議会における言論の自由)を入れ込んだのはなぜだとあなたは考えるか。なぜ第9条は重要だと考えるか?
 
以下、ブログ投稿者のコメント。
 毎回の史料パート紹介にみられるように、アメリカの歴史教科書では史料の読み取りを確認するための問題がついている。内容は3問目以外は史料の本文を正しく読み取れているかを確認するものであり、一見して現代文の問題かのような印象も受ける。しかし最近、史料(資料)問題を自分で作り生徒に解かせるにあたり、そもそもきちんと文章を読んで理解できているかが非常に怪しいと思う場面によく出くわした。私がつくる問題はまだまだ受験知識、用語を史料(資料)の中で答えさせるような段階にあり、上記のアメリカ歴史教科書のような、史料本文の読み取りについて尋ねるものは少ない。一問一答や問題集を生徒がすでに持っていることを考えれば、授業で扱うべきは上記の3つの設問のようなものであるべきだと思う。受験知識・用語を設問にしてしまうと、結局のところ従来の一問一答や暗記学習から脱却できないような、もやもやした感覚を抱いている。いずれにせよ「聴く」「暗記する」受動的学習形態よりも、「読む」「考える」「書く」という能動的行為を大事にし、なるべく多く盛り込んだ授業を作りたいし、作らねばならない。まずは今まで作った史料(資料)問題をもう一度見直して、設問を練り直すことから始めたい。