世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その3

以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
 
以下、該当文献からの引用。
論語
概要:この史料は孔子の弟子たちによって孔子の死後長い月日を経て(おそらく紀元前4世紀ころ)作成された、497の韻文の集成である。孔子の教えは社会秩序と良き政府の維持のために、義務と責任を重視している。
 
要約Document in Brief:論語では有徳な人物a superior personになるために重要なこととして、教育と自己犠牲を強調している。
 
本文:省略
 
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
  1. 史料に基づいたうえで、孔子の教えを最も的確に要約した文を選べ
  1. あなたの父と母にやさしくあれ。
  2. あなたの思考のなかに悪が存在しないようにせよ。
  3. あなたが行っていないことを説くのはやめよ。
  4. 紳士a gentlemanは偏見なしに、あらゆるものから疑問を引き出すことができる。
  1. 孔子は紳士について、次のように述べているー
  1. 知識のある人である。
  2. 血統がよく、尊敬される人である。
  3. ある疑問・論点から、一つ以上の意見を持つことができる(多面的な見方ができる)。
  4. 無能な人間と有能な人間を見分けることができる。
  1. C.T. Identifying Main Ideas
孔子による知識の定義について、あなた自身の言葉で表現せよ。
 
 
以下、ブログ投稿者のコメント。
国史専門ではないため、a gentlemanなどいくつかの訳語は適当なものを当てている。有徳な人物などとしたほうが適切かもしれない。この教科書では497の韻文とされているが、日本語訳では500以上あるようだ(金谷治訳注『論語岩波書店1963年)。
問3にやはり着目したい。こういったパラフレーズをさせる問題は、自分の受けた教育を振り返ると、すくなくとも社会科の時間に行った記憶はない。アウトプットを重要視していることがわかる設問だと思う。実際、きちんと自分の言葉でパラフレーズしようとするならば、内容をしっかりと理解していないとできないのは当然のことだから、生徒の理解の程度をはかることが可能だ。教員からの視点では、採点の基準をどこにおくのか、そして取り組もうとしない生徒をどうやってこの問題へ誘引するか、考えなくてはいけない。
この教科書も少なくとも問に関しては孔子の思想内容に焦点を当てているが、日本には倫理という科目がある。である以上、世界史で思想家を取り上げるならば、その人物と社会の関係性や歴史上の意義に目を配りたい。孔子は中国史で大きな位置を占めすぎていて、逆に問を作りにくいように感じる。自分の勉強不足のせいで、観点が定まらない。ひとまず、孔子が生涯就職活動で各地を渡りあるいたことを示す史料から、当時の諸子百家の活躍や富国強兵の風潮を考えさせることから始めたい。