世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その2

以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
 
以下、該当文献からの引用。
概要:この史料は紀元前1750年ごろに書かれた、都市国家バビロンの支配者ハンムラビによる282の法の集成である。これらの法律は一貫した法体系のもとに係争点が裁かれ、刑が執行されることを目的に制定された。いくつかの法は今日からすれば過度に厳しいものであると感じるが、際限のない私的制裁を抑え、より整然とした政府による裁定の仕組みを作り上げることになった。
 
要約Document in Brief:ハンムラビ法典は「目には目を歯には歯を」の原則に則った法典である。
 
本文:省略
 
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
  1. ハンムラビ法典の刑罰について、最も適切なものを選べ。
  1. 罰則の内容は犯した罪と同等にすべきである。
  2. 罰則の内容は犯した罪よりも厳しいものにすべきである。
  3. 罰則の内容は裁判官と被害者によって決定される。
  4. 罰則は迅速になされるべきである。
  1. 資料の抜粋からわかる、法典の作成された当時の社会について適切に述べているものを選べ。
  1. 子は親に従うことが要求された。
  2. 建築工は彼らの仕事に対し責任を負わなかった。
  3. 統治者は彼らの都市における強盗に対して責任を負わなかった。
  4. 奴隷ないし奉公人としての売買をしてはならなかった。
  1. Critical Thinking: Drawing Conclusions 
ハンムラビ法典の第23条は統治者の行動にどのような影響をもたらしたと、あなたは思うか?
 
 
以下、ブログ投稿者のコメント。
ハンムラビ法典は「目には目を歯には歯を」が注目されてきたと思う。授業実践でも身分のちがいにおける刑罰内容の違いに着目させることが一般的で、この法典から学ぶ内容は当時の社会の身分制度であったのではないだろうか。身分制度の実態をわかりやすく示す資料、実践としてこれはこれで必要だと思うが、そもそも法が制定されたのはなぜか、法が制定される以前の社会はどのようなものであったのか(私的制裁の支配的な社会)、法の制定とは歴史的にどのような意義があるのか(中央集権や国家の成立など)、といった点に関してもぜひ考えさせたい。このアメリカの教科書では概要の部分でこれらの点に関して短くも的確に叙述されており、参考になる。ハンムラビ法典の読解可能性の大きさに目を開かされた気になった。