世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

実践記録:唐代の両税法

資料問題 
唐代の農民:白居易(白楽天)の「重賦」
お上が夏秋二度の納税をきめたのは,人民を憂(うれ)えたためです。初めのころは,役人が規定以上の取りたてをしないように,法律できめられていました。ですから規定以上の取りたてをした役人には厳しい処罰が与えられたのです。ところが,困ったことには,月日がたつにつれて役人は欲深くなり,われわれをだまして,税金を余計にしぼりあげるようになったのです。そのために,納税期でもない冬や春にも,おかまいなく税金を取りたてるのです。歳の暮には雲が重くのしかかり,冬の陰気が荒れ果てた村にいっぱいになります。夜更けには炭火もなくなってしまい,霞(かすみ)や雪が家の中に舞いこんできます。(それなのに)子供たちに体を包む着物もあてがってやれないのです。われわれがこんな状態なのに,役人の庫の中には,絹や炭が山積みになっています。われわれの体のぬくもりを全部奪いとってしまって,それで,役人はお上のご機嫌をとろうとしているのです。(「中国詩人選集13 白居易 下」岩波書店)*,綿引弘、『100時間の世界史資料と活用』、1992、47pからの孫引き
  1. この資料で言及されている税制はなんという税制を指しているか、答えよ。
  2. この資料はいつごろの時代を描写しているものと考えられるか、選べ。  
7C前半  8C前半  9C前半
  1. 著者である白居易は、農民の窮状の原因をなんだとしているか。 
 
  • 対象学年 2年生
  • 想定所要時間 5分
  • 教員のねらい
  問1では、唐代の税制が租庸調制と両税法であるという基本的知識を確認させる。「夏秋二度の納税」という文言から、どちらの税制であるかを判断させる。
 問2では両税法の施行年(780)から時代を特定させる問題。
問3は資料全体の読み取りを行わせるとともに、教員の解説のとっかかりとするため。「貧窮問答歌」などの類似した作品や「白氏文集」といった日本への影響、白居易の作品における性質の一つである政治・社会風刺など、話題は多い。
  • 想定難易度
 資料を引用した問題にほとんど取り組んだことのない状態であったため、かなりやさしい。中国の税制は苦手とする生徒が多いが、この問題は両税法を扱った1時間の最後に取り組んだため容易にこたえられると推測された。
 
  • 実践してみた結果
 正答できたのは問3のみであった。両税法=「年2回の納税」というのは受験生には常識であるが、授業で扱ったばかりでは教科書知識を資料の文言と結びつけることは難しかったのだろうか。問2に関しても決して難しくない推測のはずだが、教員が「両税法の施行年はいつだった?…とするとこの選択肢であてはまる可能性があるのは?」と補助してあげないと答えられなかった。しかも世紀の知識があいまいで、教師の意図を理解しつつも答えたのは8C前半、世紀の説明をもう一度説明してようやく正答できた。世紀の知識に関しては年度初めに問題演習を含めて学習済みだが、毎回の授業でできるだけ西暦と世紀の変換を答えさせていきべきか。問3は時間が無くなってしまい生徒に答えさせただけで終わった。
 
  • 改善策・課題
 資料の文言と教科書知識の連結・推測は教員の予想以上に、生徒は困難を覚えるようである。この点に関して、資料問題に繰り返し取り組ませ慣れさせることで改善されるか、試行していきたい。また特に資料問題に取り組み始めた時期に、適切な教員の補助はいかなる形で行われるべきかを考える必要がある。