世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

実践記録:史料に見るイスラームの特徴

史料問題 ムハンマドの「人間〇〇宣言」
今こそ異教時代の一切の貸借関係,その他諸々(もろもろ)の権利に対する義務はすべて清算された。同時に一切の階級的特権も消滅したのである。 もはや,何ぴとたりとも地位や血筋を誇ることは許されない。あなたがたは,アダムの子孫として平等であり, もしあなたがたの間に優劣の差があるとすれば,それは神を敬う心,敬神の念においてのみである。(黒田寿男「イスラームの心」中公新書,綿引弘、『100時間の世界史資料と活用』、1992、63pからの孫引き
  1. イスラーム教が経典の民としているのは何教徒か、答えよ。
  2. ムハンマドの主張を選べ。
  1. 高貴な身分にあるものは神の救いを優先して受ける。
  2. イスラーム教以前に異教を信仰していたものは差別される。
  3. 神の前にイスラーム教徒は皆平等である。
  1. イスラームの五行のうち、信者の平等を表すと考えられるものを挙げよ。
 
 
  • 対象学年 2年生
  • 想定所要時間 10分
  • 教員のねらい
  問1~3を通じて、イスラームにおける特徴である「平等」性に気付かせることを目的としている。問1は講義内容の確認、問2は史料の適切な読み取りができているかを確認する。問3は話し合いを通じてイスラームについて考えさせるための問である。
  • 想定難易度
 かなりやさしい。史料の文言にも難しいところはほとんどなく、問1.2はすぐできるはずである。
 
  • 実践してみた結果
 予想通り、問1と2で苦戦している生徒はほとんどいなかった。問3に関しては教科書や資料集から答えを探そうとしてなかなか話し合いによって解決しようとはしなかった。
 
  • 改善策・課題
 問3は最初から話し合いを想定していたのだから、問の文言を「話し合って~」など工夫すべきであった。今回の実践では「平等」を理解させることを目的としたため、この問題に関する教員の解説・まとめもその点にしぼった。しかし史料中の「異教時代」に着目すれば、生徒にとって理解しにくい宗教共同体(ウンマ)について、部族社会→宗教共同体という変化について、この史料で教授することも可能であろう。