世界史の糸

レオナルドやエジソンにはなれないけれど

ジェネラリストでもスペシャリストでもない、一教師の試行錯誤の記録。旧ブログ名:世界史の糸から改題しました。

紹介:Marsh, C., U.S. Founding Documents… DBQによる歴史教育

  • Marsh, C., U.S. Founding Documents: The Declaration of Independence, U.S. Constitution, and Bill of Rights(Gallopade, 2018)
 随分と間が開いてしまった。以前のように毎週とはいかなくとも、何とか隔週くらいで更新できるよう、少しづつ毎日書くことを習慣化したい。というわけで今回は久しぶりの洋書紹介。
 アメリカの歴史教育における副教材を手に入れた。これはアメリカの社会科教育で行われているDBQ(Document Based Question)専用の副教材で、アメリカ合衆国成立初期における歴史にフォーカスしたものである。対象学年はGrade4-12であるから、対象年齢は9-18歳ということになる。ずいぶん広い。日本ではここまで対象年齢を広げた参考書というのは、少なくとも学校教育現場の参考書に関しては、ちょっと思いつかない。
 DBQとは何か。本書から引用しつつ述べると、「生徒が複数の史料を読み、分析して『大きな問a big question』に答える」もので、かつ「生徒は自分の答えを史料から引用した証拠や例で実証supportしなければならない」というものである。当然回答はエッセイ(論述)の形式をとることになるわけであり、日本における論述指導においては(少なくとも社会科教育においては)ほとんど見られなかった学習の在り方である。日本における論述は、専門用語の解説であろうと、特定のテーマの論述であろうと、基本的には事前にインプット(暗記)したものをアウトプットする作業であった。一方でこのDBQは、読解→分析→既存知識との連関→論理的思考による結論のアウトプットという作業を、「複数資料」に対して行うものであり、かなりハードな学習活動である。
 本書のカバーに「DBQは生徒に歴史家のように考えることを教える」とあるように、DBQは近年日本でも浸透してきた「歴史家のように考える」授業形式の一つであり、日本の歴史教育にも参考になるところがあるはずと思う。次回もこの本を取り上げ、DBQがどのように行われるのか、副教材を通じて紹介をしていきたい。