紹介:Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition その10
以前紹介したアメリカの歴史教科書Ellis, E. G., Esler, A., World History Connections to Today Teacher's Edition,(Prentice Hall,1999)の、史料パート紹介の続き。
以下、該当文献からの引用。
ベルナル・ディアス・デル・カスティリョ『メキシコ征服記』
概要:ベルナル・ディアス・デル・カスティリョ(1492ころー1581)はコルテスのアステカ王国(現メキシコ)征服に随行した。ディアスは征服に関する不正確な記録に反駁するため、のちに『メキシコ征服記』を執筆する。以下の抜粋ではコルテスとアステカ王のモステクマが、首都テオティワカンにて会見する場面である。
本文:省略
史料分析Analyzing the Document:上記の抜粋を参考にして、以下の問いに答えよ。
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抜粋に描かれているのはー
A テオティワカンの市場と神殿の頂上から見える風景
B 多くの像を含めた神殿内部
C 市場から見たテオティワカンの神殿
D ローマにおける市場の光景
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筆者のアステカ人に関する見解として最も適当なものはどれか。
A generous and busy
B evil and prosperous
C loving and kind
D athletic and loud
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C.T. Recognizing Points of View
抜粋中のどの言葉やフレーズが、著者のアステカ人の宗教に関する見解を表しているか?
以下、ブログ投稿者のコメント。
コンキスタドールによるラテンアメリカ文明の征服に関して、以前はコンキスタドールの謀略を強調した講義をしていた。コルテスやピサロといったコンキスタドールたちの貪欲さを示すエピソードとして悪くはないが、征服時の謀略や混乱を強調すると、その後のスペインによるラテンアメリカ支配体制や、それに伴う先住民の人口激減などがかすんでしまう。今ではもっと長期的な視点を前提にして、スペインのラテンアメリカ植民地支配体制の構築過程やその背景となるラテンアメリカ認識などをきちんと扱うべきだと感じている。その意味では現在の山川教科書におけるラテンアメリカ史の構成はいかにもぶつ切りで、極めて授業を構成しにくい。コンキスタドールたちの認識や行動に、その後のスペイン植民地支配体制への連続性をきちんと読み取らせる授業を構成したいと思っている。アメリカの歴史教科書における問3は、こうした問題意識を持つ者としては、そのまま活用したい内容となっている。
こうした海外の文献を読むと感じるのだが、日本では史料問題といっても、教科書で扱われている内容の確認で終わることが多いように思う(年号や重要用語をこたえさせたり、既習歴史事象の説明を選ばせたりといったもの)。アメリカではDocument Based Question(DBQ)と呼ばれる思考を促す歴史教材が用いられているが、これは単に教科書に扱われている内容を史料で確認するのではなく、著者の見解や立場、偏見などを分析していく活動が行われている。歴史総合および大学共通テストにおいて、日本でもそうした傾向がだんだんと強まると思われる。いずれにせよ諸外国の事例をしっかりと研究したうえで、授業を構築していきたい。なおDBQに関する書籍についても、今後紹介していきたいと考えている。