授業実践:大河と古代文明
研究者間で意見はわかれるが、文明と認定されるには8つの要件が必要とされる。
以下8つの要件と、大河にどのような関連性があるか考え、記述せよ。
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都市 農業生産力の向上に人口が増加、いくつかの村が統合され都市になる
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中央政府にあたる機構 余剰生産物の管理、税の徴収、法律の発布、防衛の組織化
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洗練された宗教 豊作を祈るため、自然災害を避けるため、航海の安全のため、など
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専門職の発生 土器・木造品・鉄器などの生産が始まると、石器時代と違い誰もが作れるものではなくなる
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階級の発生 余剰生産物による貧富の差、専門職グループの固定化、戦争における指導者など
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芸術と建築物 神をまつるため、階級発生後は権力の大きさと正当性を示すため
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公共事業 灌漑農業のため、また建築物のため
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文字 余剰生産物・税・商取引・法律の記録
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対象学年 2年生
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想定所要時間 10分
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教員のねらい
大河と古代文明の発生を、多角的な視点で考察させる。
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想定難易度
古代文明と大河の関係は中学校でもやっているだろうから、その内容との接続のつもりで作成した。赤色は実際に配布したプリントでは空欄にした部分である。8つすべてを埋めることはできなくても、ある程度はできるだろうと思っていた。
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実践してみた結果
2年生の世界史授業の最初期に行われたもので、まだ生徒の学力や特性の把握途中の問題であったこともあるが、生徒にとっては難易度が高すぎた。教科書の記述や資料集の利用によってある程度は回答ができるはずであるが、教師が指示しないとそれらを開きもしないという状態であり、結果として10分ではまったく終わらなかった。とくにグループワークなどの指示も出さずに個人で実践させたため、完全に思考停止状態に陥った生徒も少なくなかった。生徒の実態に合わせた教授・資料や問題作成の重要性を痛感させられた実践であった。
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改善策・課題
まず8つの要件は空欄にせず、最初から提示しておく。また比較的難易度の高い要件に関しては答えを提示しておき、生徒がそれを参考にしてほかの要件を考えやすいようにしておく。「考察させる」という当初の目的を変え、この問題を通じて「教科書・資料集の使い方(目次・索引など)、グループワークの推奨などを伝える」つもりで、再実践してみたい。